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last update 2002.12.24 |
| 12月23日(月)物語が進むたび。 |
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◆昨日。小倉での芝居作り、最初の一週間が終わった。 芝居作りにおいて、僕がもっとも恐れることは、俳優が演出の言いなりになってしまうことである。小倉の俳優たちは、今のところ何とか踏ん張って、僕の言いなりにならぬよう、芝居作りに取り組んでいる。まずはここで小休止。稽古再開の年明けを待とう。 ◆今日、一週間目の稽古が終わった翌日の早朝。僕は大阪へ向かう銀色の特急列車に乗る。小倉の街が線路の背中に遠ざかってゆく。まだ薄暗い車窓の景色をあきらめて、僕は携帯コンピュータを広げ、移動の合間に何か仕事をしようと考える。 ◆いくつかの企画書や脚本を、画面の上に呼び出してみる。書きかけの自分の文章とにらめっこをするうちに、僕はだんだん眠くなり、やがて夢に落ちた。なにか大切な夢を見たような気がする。どこか、海にいたような気がする。誰かと一緒に泣いた気がする。遠い場所で、舞台に立っていたような気がする。 ◆目覚めた時、すでに僕の乗る列車は新大阪まで1分の場所。車内アナウンスと、乗客たちがコートを羽織る衣擦れの音が、僕の夢の記憶を、綿菓子のように削ってゆく。 ◆大阪についた僕は、家庭の仕事をいくつか済ませ、自転車を飛ばして、淀川沿いの劇場へと向かう。友人にして名優・坂口修一氏が組んでいる劇団タントリズム。その解散公演の、今日は千秋楽なのだ。 ◆劇場は人であふれかえっていた。僕が着いたときすでに、何人もの観客が受付前で足止めされ、入場者の列にも入れないでいた。やがてスタッフから、 「申し訳ありません、これ以上、ご入場いただくことができなくなりました」 との説明があった。僕は、しかたないので、メッセージだけでも書き残して、そこを去ろうと決めた。 ◆劇場の通路のベンチに腰掛けて、僕はノートを取りだして、坂口さんへの手紙を書き始めた。 芝居を観ることはできなかったけれど、詰めかけた観客たちの波に押し戻されて帰るけど、なぜだか僕は、タントリズムの最後に、そんな経験をすることができて嬉しくもあるのです、それが僕のタントリズムの終わりの共有の仕方なんだと、納得ゆくのです、この時間を僕は忘れないでしょう、 そんなことを書こうとする僕の横、壁一枚へだてた劇場の中から、観客の拍手の音が聞こえる。タントリズムの最後の芝居の「前説」が始まっているのだ。 ◆その時通路の向こうから、スタッフの一人が僕の名を呼んだ。僕のために、音響オペレート卓の後ろにスペースを空けてくれたのだという。僕は書きかけの手紙を握りつぶし、スタッフの後ろについて劇場に入る。かつてないほど作り込まれた重厚な大道具の中、タントリズムの芝居が始まった。 ◆かつて青春を共にした青年たちの、寂しくて間抜けな同窓会。演じるタントリズムの役者たち。その気持を僕は思う。本物の人生の中でだって、取り戻すことのできる一瞬など存在しない。それはわかっているのだけれど。この一瞬、この台詞のやりとりひとつ。それらは全て、これが最後の一瞬、これが最後の台詞。物語が進むたび、彼らの別れが近づいてゆく。残酷だと思いながら、僕はその出来事の美しさに目も心も奪われる。 ◆やがて舞台が終わり、僕はまた自転車に乗り、家族とのクリスマスパーティに向かう。夜になった大阪の街で、自転車を漕ぎながら、僕は、かつて自分の経験した解散のことを思い出す。僕のかつての仲間たちの顔と声を思いだす。みんなの笑顔を思い出す。 ◆妻と合流し、実家へ着くと、姪が僕にクリスマスプレゼントをくれる。小学生にもなっていない姪が、どうやってお小遣いをためたのだろう、手作りのラッピングで、僕にMDプレイヤーのポーチをくれる。僕はそれを抱きしめた。 ※2003年の仮面劇に向け、西田と共に芝居作りをしてくれる表現者急募! 詳しくはTOPページを下の方までスクロール! ※『惑星ピスタチオDVDBOX』なる企画が、アプリコットバスにて現在進行中! ここしばらくは、アプリコットバスを要チェック! ※日記はなかなか毎日かけないけれど。趣味のコーナー『数行レビュー』、復活中。こっちは結構毎日、なんか書いてます。 |
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