また抽象的な話だ。
ずっと忘れていたのだけれど、初めて芝居を作った22歳の頃。
あの頃僕の描いていた芝居は、どれもこれも、「世界と自分との対決」がテーマだった。
僕は僕を産み落とした世界に、どうも恨みを持っていて、
「世界の思うとおりに生きてたまるか」
「世界の思うとおりに死んでたまるか」
なんてことを思ってた。
因果律から離脱して自分一人、世界と無関係に死のうとする科学者の物語を書いたりした。
新陳代謝のために死ぬのを拒否し、生き残り続けようとするガン細胞の物語を書いたりした。
一番大きな敵は世界で、それに負けまいと思っていたのだ。
世界を他者だと思いこむ、数学的な誤解を、僕はずっとしていた。
ある時、僕は、因果律から離脱した科学者の話をもう一度書き直してみたら、その結末は、以前と全然違うものになっていた。
新しい結末の中で、科学者は、世界そのものになってしまったのだ。
今、僕は世界を敵だと思っていない。
世界を他者だと思っていない。
人間、変わるもんだね。