last update 2004.10.17


2004年10月17日(日)
冷たい体の友人。



その、長身の、美しい友人は、
自分が人間でないことを僕にうち明けた。
彼は、ヘビの化身で、人間を主な食料にして生きているのだ。
彼の指には、この上ない切れ味を持った刃物のような爪が収納されていて、
獲物に苦痛を与えず、タテと横に、スッと切断することができる。
「いつも、全然、苦しくないように、スッと殺すんだ、簡単だよ」
と彼は美しい声で僕に言った。
ある日、彼は僕の目の前で、別の2人の友人を生きたままスライスし、食べた。
彼が食べようと思うだけで、人間は動けなくなり、難なく捕らえられてしまう。
2人の友人は、抵抗することもなく、ただ身をスライスされるたびに、
「うわ」「うわわ」
と、悲鳴なのか吐息なのかわからない声を上げていた。
僕は、彼が僕らの友人を食べる光景を、恐ろしいと思い、そして美しいとも思った。
止める勇気はなかったし、止めるべきかどうかも、分からなかった。
彼は食事をしているだけなのだ。食事のどこに罪がある?
いつか僕が食べられることを僕は想像して、僕は恐怖と期待を感じた。
彼はある雨の日、人間の警官に追いつめられ、撃たれた。
彼は冷たい血を流しながら、黒いタイヤが積み重なった場所へ逃げた。
僕も一緒についていった。
そこには、彼がこれまで食べた人間の、おびただしい白骨が埋まっていた。
雨の中、僕の息は白く、彼の息は白くなかった。
弱った力で彼は僕の手をとり、僕に言った。
「オマエだけは喰わないことにしてたんだ」
その続きを言わずに、彼は息絶えた。
喰わないことにしていた、それだけを言いたかったのか?
喰えばよかったと言いたかったのか?

僕は冷たい友人を雨の中抱きしめた。
死の恐怖から解放されて安堵し、死の期待から見放されて悲しかった。

いやもちろん、夢の話だよ。



僕らは誰かの犯した罪を、皆で償えばいいんじゃないか。
死刑ですら償えない大量殺人犯の罪も、
責任を問えない少年の罪も、
もつれてほどけないアメリカの罪も、
「どうやって当人に償わせるか」そればっかり考えても、
非現実的な答えしか出ない。
僕らみんなで、罪人の罪を償うんだ。
みんなで、被害者を悲しみから救うのだ。
きっとそうすれば死刑もいらない。
戦争もいらない。



『週刊シャトナー研。』準備中トップへ N氏の日記トップへ 過去の日記一覧へ