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◆『宇宙猿』が終わった。
名残りおしい打ち上げを、劇場で深夜まで続けた。
僕の隣に住んでいる歌舞伎俳優の原さんもやってきて、一緒に飲んでくれた。
一緒に芝居を作ってくれた俳優たちやスタッフたちに、僕は心からお礼を言いたかったけれど、うまく言えたかな。
まあ、いいんだ。言葉で言うようなものではないかもしれないし。
解散して夜道を帰りながら、原さんが僕に言う。
「今ね、僕の庭でキュウリが毎日4本とれるんだわ。今度あげるね。縦に切って、おやつ代わりに食べると美味しいよ」
彼は僕にお疲れさん、とか言わずに、そんなことを言うのだ。
ああ、言われるだけで、心に大きな月が出る。
僕もこんな風に言葉を使おう。言葉は、言葉じゃないんだ。
◆翌日、月曜日。
久しぶりに少し長めに僕は眠りった。
遅めに 起きて新聞を取りに出たら、ドアの外側のノブに、ビニール袋がかかっていて、その中にキュウリが4本入っている。
僕の心に、入道雲が出る。
それから、ご飯を食べたりして。
そのあと夜まで何をしていたのか、よく覚えていない。
たぶん、ボーっとしていたんだろう。
夜、演劇研究所のメンバーたちと集まって、今後の活動について話す。
「丁寧に芝居を作っていきたい」
僕は皆に、そう言った。
やれやれ、僕の言葉は、ただの言葉だな。
◆今日、火曜日。
朝、締め切りを待ってもらっていた文章を仕上げ、FAXで送った。
名古屋の演劇練習施設の出している機関紙に載せてもらう文章。
自分の目指す演劇について書いてください、と言われていたので、僕は95年の阪神淡路大震災のときの経験を書いた。
それまで特にどんな演劇も目指していなかった僕だったけれど、あの時以来、未来の子供たちのために演劇を作ることにした。
その時の思いを書いたつもりだけど……どうかな。うまく書けたかな。
◆午後、僕は自転車で名古屋駅まで行き、東京行きの新幹線に乗った。
ここ今年になってから参加させてもらっている映像作品プロジェクトの会議に出るためだ。
荻窪のスタジオで、素晴らしいプロットについて感想を延べ、タバコを沢山吸った。
そして今、ホテルでこの日記を書いている。
◇ ◇ ◇
◆ 『宇宙猿』が終わって、次に何をしようか、改めて考え続けている。
ん? 考え続けていると言っても、芝居が終わってまだ60時間程度しか経っていないのか。
ここ数年、芝居作りの時間が足りなくて、「時間切れ」のまま本番を迎える悔しさを繰り返してきた僕だった。
『宇宙猿』は、久しぶりに、時間切れではない状態で、幕を開けることができた。
だから、芝居のいい部分も、あと一歩の部分も、すべて今の自分の力量なのだと納得ができて。
たったそれだけのことが、かみ締めたくなるほどにありがたい。
いやいや、時間切れになるかどうかも力量のうちなんだもの。
僕はこのところ、乱暴に芝居を作りすぎていた。
丁寧に芝居を作ろう。
ホント、そうしよう。
◆……と思ってるんだけど。
早くも2週間後には、次に演出する舞台の初日が迫ってる。
さらにその1週間後には、役者として出演する舞台の初日。
やれるかな。やれるよね、丁寧に。
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