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◆深夜。窓の外で、雨が降っている。
家で聴く雨の音は、主に4つの層で出来上がっている。
雨が降る、大きな空間の音。
窓のすぐ近くで、水が滴る近い音。
遠くで、車が水溜りの水を跳ね上げて走る音。
そして、僕がひとり、部屋で立てる物音。
今夜妻は仕事で遠い街にいて、
寝室はただ、暗く、シンとしている。
◆僕はひとり、
11月から稽古に入る芝居の演出プランを、机の上で考えている。
九州の田舎町での出来事をつづった、若い作家の戯曲を演出するのだ。
人間の機微を描いた戯曲。
だけど僕はこの芝居で、人間の機微を描こうとは思っていない。
人間の機微を描いた戯曲を題材に、宇宙を描くのだ。
そう、宇宙の法則の森で、原子の妖精が、
人間の戯曲を拾って、それを上演しているような。
◆僕の演出プランを聴いて、
舞台装置担当の美術家は、「巻貝の貝がら」をモチーフにして、装置をくみ上げると言う。
舞台衣装担当のデザイナーは、「昆虫」をモチーフにした衣装をデザインすると言う。
音楽担当の演奏家は、「優しさ」をモチーフにした曲を作ることになった。
さて、11月には、俳優たちが、演技を作る。
どんな演技を生み出してもらおうかな。
◆美しくて楽しい舞台にしたい。
宇宙は、美しくて楽しい場所なのだ。
孤独も、死も、苦痛も。
すべて本当は、美しくて楽しいのだ。
◆ひとりでいると、ギターを弾きたくなる。
ギターを弾く。
僕の手元から、熱い寂しい音が流れてくる。
ずっと部屋でひとり、30年もギターを弾き続けてきた僕は、
そういう音を出す大人になった。
……ん?
いやいや、大人にはなってないかもしれない。
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