西田シャトナーより、
『地蔵さんが転んだ』の演出意図について

 

AAF戯曲賞2006年受賞作、『地蔵さんが転んだ』は、
新鋭劇作家・松田清志による丁寧な筆致による戯曲。
九州の田舎町を舞台に、
ぎこちなくも暖かい、人間の機微を描く物語です。

しかし、僕は、
今回の舞台で、人間の機微を描こうとは思っていません。
「人間の機微を描いた戯曲」
を題材にして、
劇場に宇宙の構造を出現させるつもりです。

もしも、
宇宙の法則の森の奥、
出来事の泉のほとりで、
原子の妖精たちがこの戯曲を拾ったら。
彼らはどんな風に、この芝居を上演するだろう?
彼らにとって、「人間」とはなんだろう。
彼らは、「町」をどうイメージするだろう。
彼の思う「縁側」は、どんな形をしているだろう。

僕は、たとえばそのように、
想像力の根を張りながら、
この舞台を組み上げることにしました。

僕の演出プランを聴いて、
彫刻家は、
「巻貝の貝殻」をモチーフにした装置を思いついたと言いました。
衣装デザイナーは、
「昆虫」をモチーフにして、役者の姿をデザインする予定です。
音楽家は、
「やさしさ」のいくつかの形を音符に直し、楽曲を作ることになりました。
さて、俳優たちには、
どんな演技を生み出してもらおうかな?

仮説ではあるけれど、
人と人とのつながりやぎこちなさは、
原子核と電子をつなぎとめている引力や運動と、
比喩ではなく全く物理的に、
同じエネルギーで出来ている可能性があります。

そのエネルギーを、
僕は舞台に満たしたいのです。

『地蔵さんが転んだ』は、
楽 しい、美しい、孤独な芝居になるでしょう。





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